
住友館クリエイターズボイス Vol.1 内藤 純(PARADE)
こんにちは、住友館です。
この連載「住友館クリエイターズボイス」では、展示や建築、演出に関わったクリエイティブスタッフたちの“声”を、少しずつ紹介していきます。
万博やパビリオンにかける想い、乗り越えた苦難、ゆずれないこだわりなど、たくさんの物語が詰まっています。
今回の語り手は、パビリオン全体の舵取り役を務め、チームをまとめたチーフクリエイティブディレクター/総合プロデューサーのPARADE Design Firm 内藤純さんです。
<内藤 純 プロフィール>
2005年愛・地球博トヨタグループ館をはじめ、ミラノ万博日本館、ドバイ万博日本館など数多くのパビリオンをプロデュース。東北六魂祭やミツカンミュージアム、企業のショールーム、展示会・都市開発などを多数手掛ける。2023年にPARADE Design Firmを設立。「リアルな体験価値の創造」を目的に、イベント・スペース領域の高度化、次世代化をはかる。
https://parade-df.com/
住友館に関わることになったキッカケは?
大阪・関西万博の民間パビリオンの話が動き始めたのは、2021年3月、当時携わっていたドバイ万博の開幕が半年後に迫っていた頃です。いくつかのパビリオンの提案を企画していた時期に、住友グループのお話が私の元にやってきました。「今回の開催地は住友グループゆかりの大阪・関西。やらずしてどうする!」と、当時の同僚から檄を飛ばされた事をキッカケに、住友グループのお仕事をさせていただくことが決まりました。
住友館の体験はどうやって生まれた?
前回の1970年大阪万博に住友グループが“住友童話館”を出展していたこともあり、未来を創る子どもたちにメッセージを届けるというイメージは当初からありました。
さらに調べていく中で、住友グループの発展の礎である「別子銅山」と、森林や自然環境の維持や、地元の人たちとの共存のために、多くの苦難を乗り越えてきた今日に至るまでの歴史を知りました。

これをキッカケに、“森と風”というキーワードが浮かび、“森”は自然環境と人間社会、“風”は長い時代を巡る変革の歴史、と設定しました。さらにここから、今回の万博全体のテーマ“いのち”と融和させ、“未来を創る子どもたち”に届けるにはどうしたらいいか?を考えていきました。
そこで考えたのは、
- “森”を人間がつくった森ではなく、“私たち人間が知らない森”とすること。
- その森で、動物や植物などの多くの“いのちの物語”が紡がれていること。
- そしてその物語が、悠久の時を重ねた“風”と共に、私たち人間に運ばれてくること。
という設定をしました。

未来を創る子どもたち、そして、子ども心を今も持っている大人たち、さらに、子ども心を忘れてしまった大人たちに向けて、「誰も知らない森を来場者自らが探検して、森に隠れた “いのちの物語”を見つけ出す。」という住友館の源泉となるアイデアを構築しました。
このアイデアを構築した瞬間は、とても印象的なものとして残っています。
UNKNOWN FOREST実現に向けて大切にしたことは?
次なる挑戦はアイデアを実現させること。つまり「“人間の知らない森”をどう創るか?」でした。最高のクリエイティブチームを編成して、誰も知らない森 “UNKNOWN FOREST”を誕生させ、来場者に感動体験を提供するために、チームとしてこだわったことは、主に3つです。
Immersive
造作、造形、映像、照明、音などが一体となって没入感を演出すること
Narrative
体験の経過、時間の進行と共に物語が紡がれていくこと
Conversion
来場者の想像を超える場面転換(空間演出)があること
この3つの軸をチーム全員と共有し、委ね、共に創り上げていきました。

開館から現在までの手応えは?次なる一手はありますか?
私はついこの間までX(ツイッター)などSNSはやっていなかったのですが、住友館がオープンしてからは、毎日”住友館”に関わるリアクションをチェックするようにしています。頂戴したコメントを真摯に受け止めて、大いに参考にさせてもらっています。

森の中を自由に散策する仕様なので、体験される方々がどう動くか?は未知数な部分も多くありました。オープン当初、私たちの予想とは全く違う動きをされている人たちも多く、衝撃を受けたこともありました。現在も、日々、来場者の方々の動きを観察し、少しでも改良できるように頑張っています。
住友館の次、未来に向けて、ひとこと。
多くの人たちに感動体験を届ける、そんな仕事をつづけていきたいと思っています。